ネットワークについて学び始めると、スイッチや無線LANといった様々なネットワーク機器の用語が出てきますよね。たしかに、ネットワークを構成する機器には様々なものがあります。
中でも、紛らわしいのが今回ご説明する、
●L2スイッチ(スイッチングハブ)
●L3スイッチ
です。
そこで今回の記事では、それぞれの役割やデータ転送方法に着目して、両者の違いをわかりやすく説明していきます。
L2スイッチ、L3スイッチのネットワーク上の立ち位置
L2スイッチ、L3スイッチの役割とデータ転送方法
L2スイッチとL3スイッチの違い①|ネットワーク上の立ち位置
まず、ネットワーク構成におけるL2スイッチとL3スイッチの立ち位置を確認します。
例として、企業内のネットワーク構成例を以下に示します。
ここで、色分けされた各事業部は、それぞれ違うネットワークであると思ってください。
まず、L2スイッチに着目してください。
L2スイッチには、各事業部のPCがつながっていることが分かります。つまり、L2スイッチは同じネットワーク内の機器同士をつなぐ立ち位置にあります。
次に、L3スイッチに着目してください。
L3スイッチには、各事業部のL2スイッチがつながっていることが分かります。つまり、L3スイッチは別のネットワーク同士をつなぐ立ち位置にあります。
ざっくりと、L2スイッチはPCやサーバなどの機器を束ねているもの、L3スイッチはL2スイッチを束ねているものだと認識してください。
ここから、詳しくそれぞれに違いについてみていきます。
L2スイッチとL3スイッチの違い②|役割
L2スイッチの役割
L2スイッチは、OSI基本参照モデルの第2層の役割を果たしています。
第2層の役割とは、データ転送によりL2スイッチへ送られてきた電気信号を、MACアドレスを用いて送り先を判断することです。
※MACアドレスというのは、コンピュータに一意に割り当てられている識別番号のことです。
そのため、L2スイッチは集線装置とも呼ばれ、同じネットワーク内のPCやコンピュータをケーブルで束ねて通信する役割を果たしています。
※OSI基本参照モデルについて詳しく知りたい人はこちら。
※L2スイッチの一例「Cisco Systems社製」
L3スイッチの役割
L3スイッチは、OSI基本参照モデルの第3層の役割を果たしています。
第3層の役割とは、送られてきたパケットの送信先を、IPアドレスを用いて判断することです。
※IPアドレスとは、コンピュータを識別する一意の番号のことです。
MACアドレスがコンピュータの出荷時にベンダーにより決められているのに対し、IPアドレスはユーザが識別しやすいように自由に設定できます。
L3スイッチは経路制御装置とも呼ばれ、異なるネットワーク同士の通信の際に用いられます。
※L3スイッチの一例「Cisco Systems社製」
L2スイッチとL3スイッチの違い③|経路制御方法
L2スイッチのデータ転送制御方法
まず、L2スイッチの外観を確認しましょう。
L2スイッチは下のようにたくさんのポートを持っていて、そこにケーブルを挿してコンピュータ同士の通信の仲立ちを行っています。
L2スイッチがデータの送り先の判断に用いているのが、MACアドレステーブルです。そこには、どのMACアドレスのコンピュータがどのポートに接続しているかが記録されています。
それを使って、宛先MACアドレスから宛先インタフェースを判断しているのです。
では、L2スイッチのMACアドレステーブルを用いた、具体的なデータ伝送制御の流れを説明します。
①パケットがL2スイッチに到達すると、宛先MACアドレスがMACアドレステーブルに載っているか確認する。
②載っていれば、該当するインタフェースにのみパケットが送られる。
③載っていなければ、送信元のインタフェース以外のすべてのインタフェースにパケットが送られる。
L3スイッチによる経路制御方法
こちらもL2スイッチと同様、外観を確認します。
L3スイッチも、下のようにL2スイッチと似た構造をしています。L3スイッチは、L2スイッチの機能にIPアドレスによるルーティングの機能が付加されているのが特徴です。
L3スイッチが、パケットの送り先ネットワークの判断に用いているのが、ルーティングテーブルです。
L3スイッチは、ルーティングテーブルを参照することで、どのネットワークにパケットを送ればいいかを判断しています。
では、L3スイッチのルーティングテーブルを用いた、具体的なデータ伝送制御の流れを説明します。
A事業部のIPアドレス"10.0.0.1"のPCから、B事業部のIPアドレス"172.16.0.1"のPCへのデータ転送を考える。
①10.0.0.1から送られたパケットは、宛先172.16.0.1が同じネットワークに存在しないため、L3スイッチへ送信される。
②L3スイッチは、自身のルーティングテーブルを参照し、宛先ネットワークへパケットを伝送する。
今回は、宛先172.16.0.1へのルーティングはDirectly Connectedなので、172.16.0.0/24のネットワークへ伝送される。
※Directly Connectedとは、自身が直接伝送できるネットワークという意味。今回の場合、L3スイッチが直接伝送できるネットワークは、10.0.0.0/24と 172.16.0.0/24。
③パケットを受け取ったB事業部側のL2スイッチは、MACアドレスを参照し、172.16.0.1のPCへパケットを届ける。
L2スイッチとL3スイッチの違いまとめ
以下の表に、L2スイッチとL3スイッチの違いを簡単にまとめました。
L2スイッチ | L3スイッチ | |
---|---|---|
OSI基本参照モデルの階層 | データリンク層(第2層) | ネットワーク層(第3層) |
データの転送範囲 | 同一ネットワーク | 異なるネットワーク |
転送時の参照アドレス | MACアドレス | IPアドレス |
転送時の参照テーブル | MACアドレステーブル | ルーティングテーブル |