EC2のインスタンスタイプは、いくつかの構成要素で記述されています。
そのため、インスタンスタイプを選ぶ際に、それぞれの意味やどんな種類があるのかを理解してことは重要になります。
そこで今回の記事では、EC2のインスタンスタイプについて、構成要素の意味の説明やインスタンスタイプの一覧をご紹介します。
- EC2のインスタンスタイプの構成要素の意味
- インスタンスタイプの一覧(※2021年10月13日現在)
EC2インスタンスタイプとは
EC2インスタンスタイプは、上記のようなネーミングポリシーで記述されます。
では、それぞれの構成要素が何を意味するのか説明していきます。
EC2インスタンスファミリー
EC2インスタンスファミリーは、メモリ・I/O・CPUクロック重視、GPU・FPGA搭載、価格重視などの特徴を表します。処理するワークロードに合わせて、選択する必要があります。
EC2インスタンスファミリーは、大きく以下の5種類に大別されています。
- 汎用
- コンピューティング最適化
- ストレージ最適化
- メモリ最適化
- 高速コンピューティング
それぞれについて簡単に説明します。
一般的なシステム用途に適用可能なバランス型
例)T3、A1、M5、M5a
高パフォーマンスプロセッサ処理の恩恵を受けるアプリケーション向け
例)C5、C5n
大容量ストレージに対する高I/Oスループット性能に特化
例)I3、H1、D2
メモリ内の大きいデータセットを処理するワークロードに対して高パフォーマンス
例)X1、X1e、R5、R5a、Z1d、High Memory
グラフィック処理など、GPUやFPGAを利用する処理向け
例)F1、P3、G3
EC2インスタンス世代
EC2インスタンス世代は、インスタンスファミリーの世代を表し、数が大きいほど世代が新しいことを意味します。
世代が新しい方が高性能でコストパフォーマンスも高いため、極力最新世代のインスタンス利用が推奨されています。
EC2インスタンス追加機能
数字の後のアルファベットは、追加機能を表します。例として、以下のようなものがあります。
- d → 標準インスタンスに対して内臓ストレージ(インスタンスストア)付加
例)C5d、M5d、R5d、P3dn、Z1d - n → 標準インスタンスに対してネットワークを強化
例)C5n、P3dn - a → AMDのCPUを搭載
例)M5a、R5a - その他(e、sなど)
EC2インスタンスサイズ
CPU、メモリ、ネットワークのキャパシティによって、インスタンスサイズが分類されています。
アプリケーションが必要とするリソース量に合わせて選択する必要があります。
EC2インスタンスタイプ一覧 ※2021年10月13日現在
ここからは、EC2インスタンスタイプの一覧と、それぞれの特徴を簡単にご紹介します。
それぞれにインスタンスサイズがありますが、そちらは割愛しています。
汎用
インスタンスタイプ | vCPU | 特徴 | ユースケース |
---|---|---|---|
Mac | 3.2 GHz (4.6 GHz ターボ) のIntel Core i7 プロセッサ | ・Apple Mac miniコンピュータ搭載 ・macOSへのアクセスを提供 | ・Xcode IDE での iOS、iPadOS、macOS、WatchOS、tvOS アプリケーションの開発、ビルド、テスト、および署名 |
T4g | AWS Graviton2 プロセッサ | ・T3インスタンスよりも最大40%高いコスパを発揮 ・多岐にわたるバースト可能な汎用ワークロード | ・マイクロサービス ・低レイテンシーのインタラクティブアプリケーション ・小規模/中規模のデータベース ・仮想デスクトップ ・開発環境 など |
T3 | Intel Xeon Platinum プロセッサ | ・ベースラインレベルのCPUパフォーマンスを提供する次世代のバースト可能な汎用インスタンスタイプ ・バランスの取れたコンピューティング、メモリ、およびネットワークのリソースを提供 | ・マイクロサービス ・低レイテンシーのインタラクティブアプリケーション ・小規模/中規模のデータベース ・仮想デスクトップ ・開発環境 など |
T3a | 2.5 GHz AMD EPYC 7000 シリーズ プロセッサ | ・同等のインスタンスに比べ最大10%のコスト削減を実現 | ・マイクロサービス ・低レイテンシーのインタラクティブアプリケーション ・小規模/中規模のデータベース ・仮想デスクトップ ・開発環境 など |
T2 | Intel Xeon プロセッサ | ・無料利用枠で使える低コストな汎用インスタンスタイプ ・ベースラインレベルのCPUパフォーマンスを提供 | ・ウェブサイト ・ウェブアプリケーション ・開発環境 ・ビルドサーバー ・コードリポジトリ ・マイクロサービス ・テスト など |
M6g | AWS Graviton2 プロセッサ | ・価格/性能比はM5インスタンスよりも最大50%向上 | ・アプリケーションサーバー ・マイクロサービス ・ゲーミングサーバー ・中規模データストア ・キャッシングサーバー群 など |
M6i | 最大3.5GHz の第3世代Intel Xeon スケーラブルプロセッサー | ・M5よりコンピューティングコストパフォーマンス最大15%向上 | ・バックエンドサーバー ・ゲームサーバー ・キャッシュサーバーフリートなどのワークロードや ・アプリケーション開発環境 など |
M5 | Intel Xeon Platinum プロセッサ | ・バランスの取れたコンピューティング、メモリ、およびネットワークのリソースを提供 | ・小規模/中規模のデータベース ・追加のメモリが必要となるデータ処理タスク ・キャッシングフリート ・エンタープライズアプリケーションのためのバックエンドサーバーの実行 |
M5a | 2.5 GHz AMD EPYC 7000 シリーズプロセッサ | ・同等のインスタンスに比べ最大10%のコスト削減を実現 | ・小規模/中規模のデータベース ・追加のメモリが必要となるデータ処理タスク ・キャッシングフリート ・エンタープライズアプリケーションのためのバックエンドサーバーの実行 |
M5n | 最大3.5GHz の第2世代Intel Xeon スケーラブルプロセッサー | ・ネットワーク間でバランスを必要とするワークロードに最適 | ・ウェブとアプリケーションサーバー ・小規模/大規模データベース ・クラスターコンピューティング ・ゲーミングサーバー ・キャッシングフリート ・その他のエンタープライズアプリケーション |
M5zn | 最大4.5GHzの第2世代Intel Xeon スケーラブルプロセッサー | ・M5ファミリーで最新製品 | ・ハイパフォーマンスコンピューティングなどの低レイテンシーネットワーキング ・自動車、航空宇宙、エネルギー、および通信業界向けのシミュレーションモデリングの恩恵を受けるアプリケーション |
M4 | Intel Xeon® E5-2686 v4 (Broadwell) プロセッサ (2.3 GHz) または Intel Xeon® E5-2676 v3 (Haswell) プロセッサ (2.4 GHz) | ・バランスの取れたコンピューティング、メモリ、およびネットワークのリソースを提供 | ・小規模/中規模のデータベース ・追加のメモリが必要となるデータ処理タスク ・キャッシングフリート ・エンタープライズアプリケーションのためのバックエンドサーバーの実行 |
A1 | AWS Graviton プロセッサ | ・大幅なコスト削減 | ・ウェブサーバー ・コンテナ化されたマイクロサービス ・キャッシングフリート ・分散データストア ・開発環境 |
コンピューティング最適化
インスタンスタイプ | vCPU | 特徴 | ユースケース |
---|---|---|---|
C6g | AWS Graviton2 プロセッサ | ・C5インスタンスよりも 最大40%高いコスパ | ・高性能コンピューティング (HPC) ・バッチ処理 ・広告配信 ・動画エンコーディング ・ゲーム ・科学的モデリング ・分散分析 ・CPU ベースの機械学習 |
C6gn | AWS Graviton2 プロセッサ | ・C5nインスタンス よりも最大 40% 優れたコスパ ・最大100Gbpsの ネットワークを提供 | ・高性能コンピューティング (HPC) ・バッチ処理 ・広告配信 ・動画エンコーディング ・ゲーム ・科学的モデリング ・分散分析 ・CPU ベースの機械学習 |
C5 | 最大3.6GHzの 第2世代Intel Xeon スケーラブルプロセッサ | ・コスト効率が高い | ・高性能のウェブサーバー ・科学的モデリング ・バッチ処理 ・分散分析 ・高性能コンピューティング (HPC) ・機械学習/深層学習推論 ・広告配信 ・ゲーム ・動画エンコーディング |
C5a | 最大3.3GHz AMD EPYC 7002 シリーズプロセッサ | ・幅広いコンピューティング集中型ワークロード向けに、優れたx86のコストパフォーマンスを提供 | ・バッチ処理 ・分散分析 ・データ変換 ・ゲーミング ・ログ分析 ・ウェブアプリケーション など |
C5n | 3.0GHz Intel Xeon Platinum プロセッサ | ・最大100Gbpsの ネットワークを提供 | ・高性能ウェブサーバー ・科学的モデリング ・バッチ処理 ・分散分析 ・高性能コンピューティング (HPC) ・機械学習/深層学習推論 ・広告配信 ・動画エンコーディング |
C4 | Intel Xeon E5-2666 v3 (Haswell) プロセッサ | ・コスト効率が高い | ・ウェブサーバー ・バッチ処理 ・分散分析 ・広告配信 ・ゲーム ・動画エンコーディング |
メモリ最適化
インスタンスタイプ | vCPU | 特徴 | ユースケース |
---|---|---|---|
R6g | AWS Graviton2 プロセッサ | ・R5インスタンスよりも最大40%高いコスパ | ・オープンソースデータベース ・インメモリキャッシュ ・リアルタイムビッグデータ分析 |
R5 | 最大3.1GHzのIntel Xeon® Platinum 8000 プロセッサ | ・R4と比較してGiBメモリあたり価格が10%低く、CPUパフォーマンスも最大20%高い | ・高パフォーマンスデータベース ・インメモリキャッシュ ・中規模のインメモリデータベース ・リアルタイムのビッグデータ分析 |
R5a | 2.5GHz AMD EPYC 7000 シリーズプロセッサ | ・同等のインスタンスより GiBメモリあたり価格が10%低い | ・高パフォーマンスデータベース ・インメモリキャッシュ ・中規模のインメモリデータベース ・リアルタイムのビッグデータ分析 |
R5b | 最大3.1GHz 第2世代カスタムIntel Xeon スケーラブルプロセッサ | ・同サイズのR5インスタンスと比較して、EBSパフォーマンスが3倍向上 | ・高パフォーマンスデータベース ・インメモリキャッシュ ・中規模のインメモリデータベース ・リアルタイムのビッグデータ分析 |
R5n | 最大3.1GHz 第2世代Intel Xeon スケーラブルプロセッサ | ・高いネットワークスループット | ・高パフォーマンスデータベース ・インメモリキャッシュ ・中規模のインメモリデータベース ・リアルタイムのビッグデータ分析 |
R4 | 2.3GHz Intel Xeon E5-2686 v4 プロセッサ | ・RAMのGiBメモリあたりの価格がR3よりも安価 | ・高パフォーマンスデータベース ・データのマイニングと分析 ・インメモリデータベース |
X2gd | AWS Graviton2 プロセッサ | ・GiBメモリ当たりのコストを最小限に抑える | ・高パフォーマンスデータベース ・データのマイニングと分析 ・インメモリデータベース |
X1e | 2.3GHz Intel Xeon E7-8880 v3 プロセッサ | ・EC2インスタンスタイプの中でもRAM1GiBあたりの価格が最も低いインスタンスの一つ | ・高パフォーマンスデータベース ・インメモリデータベース ・メモリ負荷の高いアプリケーション |
X1 | 2.3GHz Intel Xeon E7-8880 v3 プロセッサ | ・EC2インスタンスタイプの中でもRAM1GiBあたりの価格が最も低いインスタンスの一つ | ・インメモリデータベース ・ビッグデータ処理エンジン ・ハイパフォーマンスコンピューティング (HPC)。 |
High Memory | ・2.1GHz Intel Xeon Platinum 8176Mプロセッサ ・第2世代2.7GHz Intel Xeon Scalableプロセッサ | ・クラウドにおける SAP HANA の本番デプロイメントを含む、大規模なインメモリデータベースの実行専用 | ・クラウド内の SAP HANA 製品のインメモリデータベースの本番インストレーションを含む、大規模なエンタープライズデータベース |
z1d | 最大4.0GHz Intel Xeon Scalableプロセッサ | ・どのインスタンスよりも周波数が高い | ・コアごとのライセンスコストが高額な Electronic Design Automation (EDA) および特定のリレーショナルデータベースワークロード |
高速コンピューティング
インスタンスタイプ | vCPU | 特徴 | ユースケース |
---|---|---|---|
P4 | 第2世代3.0GHz Intel Xeon Scalableプロセッサ | ・最新世代のGPUベースインスタンス ・クラウドでの機械学習向け | ・機械学習 ・ハイパフォーマンスコンピューティング (HPC) ・計算流体力学 ・金融工学 ・耐震解析 ・音声認識 ・自律走行車 ・創薬 |
P3 | ・2.3GHz(ベース) および 2.7GHz(ターボ) Intel Xeon E5-2686 v4 プロセッサ ・2.5GHz(ベース)および 3.1GHz(持続型全コアターボ) Intel Xeon 8175M プロセッサ | ・機械学習とHPCアプリケーション向けに最大100Gbps のネットワークスループットを実現 | ・機械学習 ・ハイパフォーマンスコンピューティング (HPC) ・計算流体力学 ・金融工学 ・耐震解析 ・音声認識 ・自律走行車 ・創薬 |
P2 | 2.3GHz(ベース) および 2.7GHz(ターボ) Intel Xeon E5-2686 v4 プロセッサ | ・汎用GPUコンピューティングアプリケーション用 | ・機械学習 ・ハイパフォーマンスデータベース ・計算流体力学 ・金融工学 ・耐震解析 ・分子モデリング ・ゲノミクス ・レンダリング |
Inf1 | 第2世代 Intel Xeon Scalableプロセッサ | ・機械学習アプリケーションをサポート | ・レコメンデーションエンジン ・予測 ・画像および動画分析 ・高度なテキスト分析 ・ドキュメント分析 ・音声会話型エージェント ・翻訳 ・文字起こし ・不正検出 |
G4dn | 第2世代 Intel Xeon Scalableプロセッサ | ・機械学習やグラフィックを大量に使用するワークロードを高速化 | ・画像へのメタデータ追加 ・オブジェクト検出 ・レコメンドシステム ・自動音声認識 ・翻訳 |
G4ad | 第2世代AMD EPYC プロセッサ | ・グラフィックを多用するアプリケーション向け | ・リモートグラフィックスワークステーション ・動画エンコーディング ・フォトリアルデザイン ・クラウド上のゲームストリーミング |
G3 | 2.3GHz(ベース) および 2.7GHz(ターボ) Intel Xeon E5-2686 v4 プロセッサ | ・グラフィックを多用するアプリケーション向け | ・3D ビジュアライゼーション ・グラフィック負荷の高いリモートワークステーション ・3Dレンダリング ・アプリケーションストリーミング ・動画エンコーディング |
F1 | 2.3GHz(ベース) および 2.7GHz(ターボ) Intel Xeon E5-2686 v4 プロセッサ | ・FPGAによるカスタマイズ可能なハードウェアアクセラレーションを提供 | ・ゲノム研究 ・財務分析 ・リアルタイムのビデオ処理 ・ビッグデータの検索と分析 |
VT1 | 第2世代 Intel Xeon Scalableプロセッサ | ・最大4K UHD解像度に対応したリアルタイム動画トランスコーディングを低コストで実現 | ・ライブイベント放送 ・ビデオ会議 |
ストレージ最適化
インスタンスタイプ | vCPU | 特徴 | ユースケース |
---|---|---|---|
I3 | 2.3GHz Intel Xeon E5-2686 v4 プロセッサ | ・SSDストレージ ・低コストで高いIOPS ・物理リソースへのアクセスを活用するワークロード向け | ・NoSQLデータベース ・インメモリデータベース ・スケールアウトトランザクションデータベース ・データウェアハウジング ・Elasticsearch ・分析ワークロード |
I3en | 3.1GHz全コアターボ Intel Xeon Scalableプロセッサ | ・SSDストレージ ・GBあたりの料金が最も安価 | ・NoSQLデータベース ・インメモリデータベース ・スケールアウトトランザクションデータベース ・データウェアハウジング ・Elasticsearch ・分析ワークロード |
D2 | 2.4 GHz Intel Xeon E5-2676 v3 プロセッサ | ・HDDストレージ ・高いディスクスループット | ・超並列処理 (MPP) データウェアハウジング ・MapReduce および Hadoop 分散型コンピューティング ・分散ファイルシステム ・ネットワークファイルシステム ・ログアプリケーションまたはデータ処理アプリケーション |
D3 | 最大3.1GHz 第2世代 Intel Xeon Scalableプロセッサ | ・高いI/Oパフォーマンスやディスクスループット | ・分散ファイルシステム ・ビッグデータ分析ワークロード ・超並列処理 (MPP) データウェアハウス ・ログまたはデータ処理アプリケーション |
D3en | 3.1GHz全コアターボ Intel Xeon Scalableプロセッサ | ・あらゆるクラウド製品の中でも最も低価格な高密度ストレージを提供 | ・Lustre、BeeGFS、GPFS、VxCFS、GFS2などのマルチノードファイルストレージシステム |
H1 | 2.3GHz Intel Xeon E5-2686 v4 プロセッサ | ・HDDストレージ ・高ディスクスループット ・バランスの取れたCPUとメモリ | ・MapReduceベースのワークロード ・HDFSやMapR-FS などの分散型ファイルシステム ・ネットワークファイルシステム ・Apache Kafkaなどのログまたはデータ処理アプリケーション ・ビッグデータワークロードクラスター |
まとめ
今回は、EC2インスタンスタイプとは何なのか、インスタンスタイプには何があるのかについて説明しました。
特に、インスタンスタイプは種類が多く、似たような命名のものがたくさんあって見分けがつきにくいです。
性能のバランスの取れたもの、CPUに特化したもの、メモリに特化したもの、GPUに特化したもの、ストレージに特化したもの、という区別だけはできた方がいいです。
その中で、自分なりの良い覚え方が見つかったいくと、よりいいのではないかと思います。
AWS認定資格を目指している人の参考にもなればうれしいです。