今回私が読んだのは、渋沢栄一著『「生き方」を磨く』です。
現代日本社会の礎を作り上げたと言われる渋沢栄一。
今でも大変有名な様々な株式会社を立ち上げてきましたが、そんな偉業を成し遂げた彼の考え方の背景には、
徹底した「論語」の考え方がありました。
今回の記事では、そんな渋沢栄一の生涯を振り返るとともに、渋沢栄一がどのような考え方を持っていたのかと、この本を読んだ私の感想を述べていきます。
この本は、渋沢栄一著「青淵百話」をもとに、そのエッセンスがまとめられたものです。
渋沢栄一の生涯
現在の埼玉県深谷市に生まれました。
渋沢家は代々豪農で比較的裕福な家庭に生まれたものと思われます。
父は教育熱心で、渋沢栄一が論語を生涯愛読するようになったのもその影響があるのかもしれません。
尊王攘夷運動に尽くすために、父に勘当を申し出て許しを得ます。
しかし、後の将軍徳川慶喜に仕えることとなります。
約2年間、パリ万博に出席するように慶喜から命令が下ります。
これは、渋沢にとってまたとないチャンスでした。この期間に西洋の資本主義文明を学んだのでした。
帰国後、日本で最初の近代的な銀行である第一国立銀行(現みずほ銀行)を立ち上げます。
その後も数々の株式会社を立ち上げ、
- 王子製紙(1873年)
- 東京海上日動(1879年)
- 東日本旅客鉄道(1881年)
- 日本郵船(1882年)
- 東洋紡(1882年)
- 帝国ホテル(1887年)
- サッポロビール(1887年)
- IHI(1889年)
などの株式会社を誕生させました。(社名は現在の名称)
古希の祝いを機会に、すべての関係会社から引退し、1916年に実業から完全に身を引きました。
それ以後、以前から関係があった病院、教育、国際関係など、社会・公共事業に専念しました。
たとえば、教育関係では、現・一橋大学、現・東京経済大学、現・日本女子大学、現・早稲田大学などと関係しました。
そして1931年、満91歳で生涯を閉じました。
【要約】『「生き方」を磨く』
真の成功者とは?
現代の世の中で、
「成功者 = お金をたくさん稼げた人」
という考えが蔓延しています。渋沢栄一は、そんな考えに警鐘を鳴らしています。
本書では以下のような対比をしています。
渋沢栄一は、決してお金儲けが悪いことであるとは言いません。
欲にまみれて、上記のような非道なやり方で稼ぐ人を非難しているだけです。
つまり渋沢栄一の中での真の成功者は、
人格者であり、より公の利益を考えている者
であると言えます。
ここで言う人格者こそ、渋沢栄一が「論語」から学んだものなのです。
その論語について、具体的に述べていきます。
【人格の磨き方】仁義礼智忠信孝悌・知情意
渋沢栄一は、論語の中の次の言葉を大事にしていました。
仁・・・思いやり、慈しみの心
義・・・道理、道徳にかなうこと
礼・・・守るべき作法、敬うこと
智・・・物事を正しく判断する力
忠・・・真心、君主に仕える道
信・・・欺かないこと、誠実であること
孝・・・父母によく仕えること
悌・・・兄弟仲が良いこと
渋沢栄一に言わせれば、これらをもって人格者というのであって、
これらなくしてお金を稼ぐことを成功者ではないのです。
そして、「仁義礼智忠信孝悌」とともに渋沢栄一が大事にしていた言葉が
以下の言葉です。
知・・・知識、事業を行うことのできるスキルや能力
情・・・情愛、社会や身の回りの人のためを想うこと
意・・・意志、必ず成し遂げてやるという強い心持ち
「仁義礼智忠信孝悌」と「知情意」をもって、
世の中のために尽くすことが渋沢栄一が生涯大事にしていた考え方です。
【夢と成功の実現方法】一事全力主義
成功者になるために、渋沢栄一は論語をもとに人格の重要性を説いてきました。
人格者であることと共に渋沢栄一が大事にしていたのは、
よく遊び、よく働くこと
だそうです。
欧米に渡り目の当たりにした日本との違いの一つが、欧米人はよく遊んでよく働いていたことでした。
これを渋沢栄一は、「一事全力主義」と呼んでいます。
仕事も遊びも趣味も全力で楽しむ。
これだけバイティリティ溢れる渋沢栄一だからこそ、あれだけの株式会社を立ち上げたり、社会・公共事業に携わったりすることができたのでしょう。
まとめ
現在の世の中では、お金を持っているか、だけが成功者の指標となっているようにも思います。
ビジネスにおいても人生においても、人格がいかに重要であるか、偉業を成し遂げた渋沢栄一が言っているだけあって、大変深みのある言葉です。
SNSが普及して、世のお金持ちの人の生活が簡単に見ることができるようになりました。それを見るたびに、
「私もあんな風になりたい、お金持ちになりたい」
と思う人も多いのではないのでしょうか。
お金を稼ぐのは結構。素晴らしいことです。その過程で、論語の考えを忘れず、「仁義礼智忠信孝悌」「知情意」を持って臨みたいものです。
『「生き方」を磨く』
渋沢栄一[原作] 竹内均[編・解説]